ストレスフル状態では「伝わる」が困難になる
仕事をしていると、
あれ?前に言ったのに…全然聞いてなかったのかな…
と思うことはありませんか?
わたしは病院勤務のときも、訪問看護を始めてからも、あります。
特に病院勤務のときはよく遭遇しました。
搾乳を教わっていない産後早期の母親の話
先日、訪問看護で「産科で搾乳を教えてもらわなかった」という方と出会いました。
お子さんが胎児診断で疾患があることがわかっていたので、搾乳指導は、生まれる前から始めてもいいくらいの方です。
搾乳の方法を遅ればせながら指導し、傾聴しているうちに、なんで病院は教えなかったんだと少し腹が立った気分になりました。
後日、同じことを産科で働いている同期に話すと
たぶん搾乳指導はしてるよね。
その時の日勤が力を入れて指導しなかったかもしれないけど。
と話し、わたしははっとしました。
嘆くのは簡単であり、恥ずかしくなりました。
たしかに、流れ作業で指導されていた可能性はありますが、産科で搾乳指導をしていないはずはありません。
ストレス状態で新しいことを取り込む難しさ
話を通して気づいたことは、その方が搾乳指導をされた時期は、言葉が入っていかない時期だったかもしれないということです。
わたしたちは毎日仕事で病院を過ごしたり毎日新しい患者さんと触れ合ったりしているため忘れがちですが、病院はストレスが高い場所です。
治療や検査だけでなく、生活リズム、寝具、におい、隣人…と非日常が連続的に起こる環境です。
ストレスフルな状況では「伝わる」が困難になります。
前述した産婦さんは、病院のストレスに加えて、産後の体の痛みと睡眠不足とお子さんがNICUにいる不安で、新たな情報を取り込む余裕がなくなっていた可能性が高いです。
書類に残せばいいんじゃない?
という意見もありますよね。
書類があるからと説明を省略する看護師もいますが、対象者は多数の書類の中から探す気力がないことがほとんどです。
訪問看護で書類置き場を拝見すると、病院や行政、職場からの書類でタウンページくらいの厚さになっていることもザラです。
話を覚えていない患者に対して看護職ができること
『病院で指導されていない。』『言われたことない。』という言葉に対してできることは、
医療者が伝えないのはいかがなものか、とグチを言うのではなく、言葉が入っていかない時期だったんだろうな・・と理解して指導することです。
また、最近話したのに言われていないという場面に遭遇した際には、「前にも言った」と決して言わず、嫌な顔をせず、最初から説明することです。
医療者の存在は、あなたが思っているより患者を圧倒しています。
ちょっとしたことですが、自分に言い聞かせると楽になります。お試しあれ。
余談
今回は患者に限定して話を進めましたが、新卒者や転職してきたスタッフにも同じことが言えます。
彼らは高ストレス状態で、日々働いています。
何かを意識して行なっていると、他のことは失念している可能性が高いです。
新人だった頃の記憶は、2年目の終わりには忘れてしまっていると思いますが、
高ストレス下ではそもそも覚えていないというのを念頭に接してみてもいいかもしれません。